今までの多くの理科の実験は、疑問⇒仮説⇒実験⇒結果⇒考察、という流れであり、そこは「再現性」を意識する場面がほぼ見られません。そこで「再現性」を意識できる実験の授業構成を考えました。
2年の電流単元、電磁誘導の発展として行いました。全3時間です。
★1時間目:科学とは何か考える
授業の初めに、あらためて「科学」とは何か考えました。
一口に科学といっても、社会科学や人文科学などもあり、そして自然科学があります。
そうした事を初めに触れ、改めて『科学とは何か』発問しました。
インターネットなどを資料とし、まずは個人で考え、班、そしてクラスで共有しました。
科学とは何かを班でまとめた内容を見ると、多くは『普遍性を追求すること』などのように資料をまとめただけとなりました。自分たちで考えた班は、『「いる」ことを証明すること』『恐怖への対処法』のようにオリジナリティのあるものも見られました。
最後に教員(私)が「科学」についてまとめた話をしました。
科学とは、狭義には自然科学ですが、広義には社会科学や人文科学なども含まれます。この場合の“科学”とは、「普遍的な真理の追究」であり、普遍的とは「時代や場所、人などに依存せず、常に成り立つ」ものであると言えます。常に成り立つということを換言すれば「再現性」と言えます。自然科学においては、この再現性は、誰かが行った実験を再度同じ条件で行うこと(追実験、又は追試といいます)により調べる事ができます。よく生徒は実験の際に『実験が成功した』『失敗した』という言い方をしますが、その問題点の指摘も行いました。そして次時(実験)へ向けた説明を行い、授業を終えました。
★2時間目:電磁誘導の発展実験
追試の意義を持たせるため、教科書などで扱っている内容では無いもの(=予習等を行っている生徒でもほぼ知らない内容)、ということで考えました。
そこで用いたのが、電磁誘導でワイヤレスLEDを点灯させられるキットです。
https://www.i-mate.ne.jp/nisiki/2020/04/denjiyudo/
「電磁誘導の発展実験を行い、気がついたことをまとめよう」というオープンエンド形式で実験を行わせました。一時間をおよそ半分にくぎり、前半は各班が自由に実験を行い気がついた内容をホワイトボードに記入させました。後半は他班の気づきを追実験し、内容が正しいか「再現性」を調べました。この流れを通じ、科学における「再現性」の大切さについて本質を考えることを狙いました。
生徒の方で気がついた主な項目としては、
・コイルとワイヤレスLEDの距離
・ワイヤレスLEDの個数と消費電流
・コイルとワイヤレスLEDの間に挟むものと点灯の関係
・ワイヤレスLEDの色と消費電流
などがあげられます。(1つの班で全部を見いだしたわけではなく、各班はこの中の1~2つ程度がほとんどでした)
これらの内容をホワイトボードにまとめさせ、前半終了時に一旦全体で確認しました。
これら授業前半で見いだした内容を、本当に正しいのか、隣の班が検証実験を行い、正しいと言えるかどうか判断しました。ホワイトボードのペンの色を変え、検証結果を記入させ、再び全体で共有しました。
これらの記録はホワイトボードと各自のプリントに行わせ、プリントは回収をしました。
★3時間目:実験結果のまとめと電磁誘導の利用
前時の実験で見いだした内容を教員(私)の方でまとめました。気がついた主な項目については、どのようになると予想されるか、また簡単に原理説明等を行いました。
そしてこのような電磁誘導の利用例(IH、Suica、無接点充電(Qiなど)の説明を、分解したときの写真等を用いて行いました。そしてどのように使うとよいのか、実験から考えられる事を共有しました。
今回、初めて普遍性、再現性、追試等を意図的に実験(授業)に組み込んで行ってみました。ただ本当にその意義を身につけさせるためには、中学校の全体を見通し、どこで今回のような観察実験を設定すると良いのかも検討が必要だと感じました。
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